コロナも5類感染症に分類されるようになり、長期休みにご旅行に行かれる方も多いのではないのでしょうか。
本日はどなたにでも起こりえる、「高山病」についてお話します。
高山病(こうざんびょう)とは、標高が高く酸素濃度の低い場所に急激に移動したときに起こる全身症状の総称です。
高地では空気が薄くなり、酸素の供給が不足するため、体がその環境に順応できずにさまざまな症状が現れます。
発症のメカニズム
急激に高度が上がることで体が低酸素状態に適応できず、高山病を発症します。
酸素の供給が不足すると、体内の酸素飽和度が低下し、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が現れます。
発症する高度の目安
標高2,000メートル以上の高地で高山病が発症しやすくなります。特に標高3,000メートル以上では注意が必要です。
ただし、個人差が大きく、1,200メートル程度でも症状が出る人もいれば、4,000メートル以上でも無症状の人もいます。
高齢者では「標高1,500メートルから高所」と考える必要があります。
登山目的以外での高山病発症例
登山以外でも、高地にある都市や観光地に急激に移動することで高山病が発症することがあります。例えば、標高の高い地域に飛行機で移動した場合や、車で一気に高地に登った場合などです。
高山病の種類と症状
高山病には主に3つの種類があり、それぞれの症状も異なります。
山酔い(急性高山病:AMS)
症状:頭痛、吐き気・嘔吐、めまい、疲労感・倦怠感・脱力感、食欲不振、睡眠障害など
山酔いは、最も一般的な軽度の高山病です。通常、標高2,000メートル以上で発症しやすいです。通常、高度に到達してから6~12時間後に症状が現れ、1~3日で改善することが多いです。
高地脳浮腫(HACE)
症状:激しい頭痛、運動失調(まっすぐ歩けない)、意識障害・錯乱、幻覚など
高地脳浮腫は、脳が水分で膨張することで発症する重篤な状態です。放置すると昏睡や死に至ることもあります。
高地肺水腫(HAPE)
症状:息切れ(特に安静時)、せき、チアノーゼ(唇や爪が青紫色になる)、胸部圧迫感、頻脈・頻呼吸、発熱(軽度)高地肺水腫は、肺に水分が溜まることで発症する命に関わる重篤な状態です。
リスク要因
高山病のリスクを高める要因には以下のものがあります。
急激な高度上昇
最も重要なリスク要因です。急速に高度が上がると、体が低酸素状態に適応できず高山病を発症しやすくなります。
1日の上昇高度を300~500メートル以内に抑えることが推奨されています。
体質や健康状態(高山病になりやすい人)
呼吸器系や心血管系の既往症がある人、偏頭痛持ちの人、過去に高山病を経験したことがある人は特に注意が必要です。貧血の人、肥満の人、運動不足の人、睡眠時無呼吸症候群の人も注意が必要です。
過去の高山病経験
過去に高山病を経験したことがある人は、再び高山病を発症するリスクが高まります。
子ども
子どもは大人よりも高山病にかかりやすいとされています。
子どもは症状を適切に表現できないことがあるため、注意深い観察が必要です。一般的に、2歳未満の乳幼児を高地に連れて行くことは推奨されません。特に急激な高度上昇は避けるべきとされています。
予防法
高山病を予防するためには、以下の方法が有効です。
段階的な高度順応
ゆっくり上ることで、体が環境に順応する時間を確保することが重要です。
標高が高くなるほど、1日に上る高度を制限し、休息日を設けることが推奨されます。目安は「3,000メートル以上では1日300~500メートル以上上昇しない」「1,000メートル上昇するごとに1日の休息日を設ける」などです。
十分な水分摂取
脱水により高山病を発症しやすくなることがわかっています。高地では体が乾燥しやすいため、こまめに、十分な水分を摂取することが重要です。目安は1日2~3リットルで、尿の色が薄い黄色になるように調整することと、アルコールやカフェインの過剰摂取を避けるようにしましょう。
適切な食事と休息
高カロリーで消化しやすい炭水化物中心の食事を心がけ、十分な休息をとることが大切です。
予防薬の使用
ダイアモックス(アセタゾラミド)などの予防薬を、高地に到着する前日から到着3日後までの4日間使用することも有効ですが、医師の処方が必要です。
当院は日本旅行医学会認定医が在籍しておりますので、気になる方はお気軽にお問合せください。