不眠症の治療
不眠症とは
不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)、早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠障害がある状態を指します。睡眠の質や量が不十分であり、それによって日中の活動に支障が出る場合があります。
不眠症の原因にはストレス、不規則な生活習慣、身体的な疾患、精神的な問題などがあります。一時的なものであれば自然に改善することが多いですが、慢性的な不眠症になると適切な治療が必要とされています。
不眠症とは、入眠障害(寝つきが悪い)、中途覚醒(眠りが浅く途中で何度も目が覚める)、早朝覚醒(早朝に目覚めて二度寝ができない)などの睡眠障害がある状態を指します。睡眠の質や量が不十分であり、それによって日中の活動に支障が出る場合があります。
不眠症の原因にはストレス、不規則な生活習慣、身体的な疾患、精神的な問題などがあります。一時的なものであれば自然に改善することが多いですが、慢性的な不眠症になると適切な治療が必要とされています。
ストレスが増えると、体内のストレスホルモンが増加し、交感神経が刺激されます。これにより、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などの不眠症の症状が引き起こされることがあります。また、ストレスが長期間続くと睡眠の質が低下し、熟睡感が得られません。
具体的には、ストレスが副腎皮質から分泌される「コルチゾール」などのホルモンの分泌を増加させます。これらのホルモンは体内時計や睡眠規律を乱し、正常な睡眠パターンを妨げる可能性があるため注意が必要です。不眠症とストレスは悪循環を生み出し合い、互いに影響を強め合うこともあります。
高血圧や心臓病、呼吸器疾患、腎臓病、前立腺肥大、糖尿病、関節リウマチ、アレルギー疾患、脳出血や脳梗塞などが挙げられます。これらの病気や症状が不眠の原因となることが多く、まずはこれらの治療が重要です。
具体的には、外傷や関節リウマチによる痛み、湿疹や蕁麻疹による痒み、喘息発作や頻尿、花粉症などが不眠を引き起こすことがあります。これらの症状を治療することで、身体的な苦痛や不快感が軽減され、不眠が改善されることがあります。
うつ病や双極性障害、統合失調症、パニック障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害などの「こころの病気」がある場合、不眠や過眠、睡眠覚醒リズムの異常、異常行動などが現れることがあります。
うつ病にかかる人が増えており、単なる不眠だと思っていたら実はうつ病だったというケースも少なくありません。不眠症状や過眠症状とともに、気分の落ち込みや意欲減退、興味の減退などの症状が見られる場合には、早めに専門医を受診することが重要です。
不眠症は、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などの睡眠障害が原因で引き起こされることがあります。これらの障害は、睡眠中の呼吸異常や四肢の異常運動が原因で、睡眠が妨げられるためです。
睡眠時無呼吸症候群は、就寝中に呼吸が止まったり浅くなったりすることで、中途覚醒や日中の眠気、倦怠感を引き起こします。この症状が疑われる場合、睡眠検査による確認が必要です。
また、レストレスレッグス症候群は、下肢の不快感やむずむず感により強い入眠困難が生じる睡眠障害です。この症状は、安静にしていると悪化し、四肢を動かすと軽減する特徴があります。
入眠障害とは、布団に入ってから30分〜1時間以上かかって寝付けない状態で、それを苦痛に感じたり、生活に支障が出たりすることを指します。
この症状は、不安や緊張が強い時に特に起こりやすいとされています。例えば、仕事や人間関係のストレスが原因で、夜になっても頭が冴えてしまい、なかなか眠れないことがあります。また、入眠障害は不眠症の訴えの中で最も多い症状の一つです。
この状態が続くと、翌日の疲労感や集中力の低下など、日常生活に大きな影響を及ぼします。
中途覚醒とは、一度寝付いた後に眠りが浅くなり、起きる時間までの間に何度も目が覚めてしまう状態を指します。睡眠中に何度も目が覚め、その後なかなか寝つけない状態が続くことが特徴です。このため、寝ても十分に回復した感覚が得られず、日中の眠気や疲労感、注意力の散漫などが生じることがあります。
特に年齢を重ねるにつれて増加しやすいです。その理由として、年をとると眠りが浅くなり、目覚めやすくなることが挙げられます。また、日本人の成人の不眠症状の中で最も多く、中高年や高齢者に多く見られるといわれています。
早朝覚醒とは、望む起床時刻よりも30分〜2時間以上早く目覚めてしまい、その後再び寝られなくなる状態を指します。この状態が続くと、日中の疲労感や集中力の低下など、生活に大きな影響を及ぼします。
特に高齢者に多く見られます。その理由として、年をとると体内時計のリズムが前にずれやすくなり、夜遅くまで起きているのがつらくなることが挙げられます。また、加齢とともに必要な睡眠時間が短くなることも影響しています。さらに、うつ病の症状としても早朝覚醒がよく見られます。
熟眠障害は、睡眠時間は十分であるにもかかわらず、ぐっすり眠った感じが得られない状態を指します。この症状は、眠りが浅く、睡眠の質が低下していることが原因です。
熟眠障害の原因として、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害など、睡眠中に症状が現れる病気が関係していることがあります。これらの障害は、本人が気づきにくいことが多いため、注意が必要です。また、他のタイプの不眠症を伴っている場合も多く見られます。
具体的には、睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることで睡眠が断続的になり、熟睡感が得られません。周期性四肢運動障害は、寝ている間に足がぴくぴくと動くことで睡眠が妨げられます。
不眠症の診断には、主に以下の2つの検査が用いられます。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは、患者が睡眠中に脳波、筋肉の動き、眼球運動、呼吸、心拍などの生理学的な指標を計測・記録し、睡眠障害や睡眠関連の問題を診断します。これにより、閉塞性睡眠時無呼吸や周期性四肢 (しし) 運動障害、睡眠時随伴 (ずいはん) 症などの睡眠障害の診断ができるようになります。
睡眠潜時反復検査(MSLT)とは、睡眠潜時反復検査(MSLT)は、睡眠障害や過度の日中の眠気を評価するための検査のことです。日中9時、11時、13時、15時、17時など決められた時間に20分ほど入眠し、眠るまでの時間を測定します。
これらの検査に加えて、不眠症の原因となる基礎疾患に関する検査を個々の状態に合わせて行い、検査データを統合して診断されます。
不眠症における薬物療法の意義は、薬物治療に頼らずとも十分な睡眠が得られるような生活習慣を作り出すことです。その上で、不眠症に用いられる代表的な薬剤は、以下の3つです。
・ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、「ベンゾジアゼピン受容体」の活性化によって、GAB(神経伝達物質)のリラックス効果を増強し、入眠を促進する薬物です。このタイプの睡眠薬には、睡眠誘発効果に加えて、不安感の軽減などの効果もあります。
・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、ベンゾジアゼピン骨格という特定の化学構造を持たない睡眠導入剤のことです。睡眠誘発と鎮静作用に関与し、抗不安作用や筋肉の緩和作用が少ない特性や、比較的依存性や耐性が少ないため、治療の第一選択薬として採用されることが多い傾向にあります。
・メラトニン受容体作動薬:メラトニン受容体作動薬は、睡眠ホルモンであるメラトニンの受容体に作用し、自然な睡眠状態を促進し、不眠症による入眠障害などを改善する薬です。この種の薬剤は、依存症や記憶障害などの副作用が少なく、高齢者にも適した特性を持っています。
認知行動療法(CBT)は、不眠症の根本的な原因にアプローチする非薬物療法です。CBTは睡眠に対する不安や誤った認識を修正し、健康的な睡眠習慣を身につけることを目的としています。具体的な技法は、以下の3つです。
・刺激統制:刺激統制法は、睡眠を妨げる条件反射の刺激を取り除き、ベッドを再び眠りを促す環境として機能させることを目指しています。不眠症の患者は、寝床に入ると不安や緊張を感じることが多いです。この療法では、眠くなったときだけ寝床に入り、寝床での活動を制限することで、不安や緊張を軽減します。
・睡眠制限:寝床にいる時間を制限して睡眠の効率を高める方法です。実際に眠っている時間に基づいて寝床にいる時間を設定し、徐々に延ばしていきます。これにより、効率的な睡眠を促進します。
・認知再構成:睡眠に対する誤った認識やネガティブな思考を修正する方法です。不眠症の患者は「眠れないと翌日が大変だ」といった不安を抱えがちです。この療法では、こうした思考を現実的でポジティブなものに変え、睡眠に対する不安を軽減します。
不眠症の治療において、生活習慣の改善は非常に重要な役割を果たします。以下に、具体的な改善方法について詳しく解説します。
・規則正しい睡眠スケジュールの維持:毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることが大切です。週末も含めて一定のリズムを保つことで、体内時計が安定し、自然な眠りを促進します。
・適度な運動:日中に適度な運動を取り入れることで、夜の睡眠の質が向上します。ただし、寝る直前の激しい運動は避けるべきです。運動は、体温を上げ、その後の体温低下が眠気を誘発するため、夕方頃に行うのが理想的です。
・寝室環境の整備:寝室は、静かで暗く、快適な温度に保つことが重要です。遮光カーテンや耳栓を使用して、外部の光や音を遮断することが推奨されます。また、寝具も自分に合ったものを選び、快適な睡眠環境を整えましょう。