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便秘症

便秘症の治療について

便秘症とは

便秘症は、排便回数の減少や排便の不調、残便感などの症状が見られる状態を指します。排便の頻度や不調は個人差があるため、定期的に排便がある人でも排便トラブルが認められる場合は便秘症と診断されます。平成28年の国民生活基礎調査によると、日本の便秘症の割合は男性2.5%、女性4.6%と報告されており、特に加齢と共にその割合は増加し、高齢者では男女差がなくなっています。

便秘症は原発性と続発性に分けられます。原発性便秘は腸そのものの動きの異常が原因で、続発性便秘は他の疾患や薬剤の影響によって引き起こされる場合を指します。特に、大腸がんや炎症性腸疾患、糖尿病、甲状腺機能低下症など他の疾患が原因である場合は、続発性便秘と診断されます。これらの病態を詳しく知るためには、大腸内視鏡検査やバリウム検査などが行われます。

便秘症

便秘症の原因

生活習慣(食習慣・ダイエットなど)

便秘症の主な原因として、不規則な食生活やダイエットによる食事制限が挙げられます。特に食物繊維の不足や水分摂取の低下、栄養素の偏りは、便の質と量に直接影響し、便秘を引き起こします。ダイエットの目的などで食事を抜くことが多い現代人には、この問題がしばしば見られます。特に、朝食を抜く習慣は便意を感じる体の自然なリズムを崩し、結果として便秘を悪化させることがあります。

水分不足は便が硬くなり、排便が困難になる一因です。食物繊維は腸の動きを活性化させ、便の通過をスムーズにする役割を持っていますが、ダイエットや不規則な食生活によりこれらが不足すると、便秘に繋がります。また、精神的なストスや運動不足も腸の運動を低下させ、便秘を引き起こす要因となります。

便秘を防ぐためにはバランスの取れた食事、規則正しい食生活、充分な水分摂取、そして適度な運動が不可欠です。便秘に悩む方は、まずは日常の食生活や生活習慣を見直し、改善することから始めるとよいでしょう。

薬剤の副作用

便秘は多くの薬剤の副作用としても知られており、特に抗コリン剤、麻薬系鎮痛剤、制酸剤、カルシウム剤などが便秘を引き起こすことがあります。これらの薬剤は、腸の運動を抑制し、便の通過を遅らせるため、慢性的な便秘につながることがあります。

また、パーキンソン病の治療薬や抗うつ剤、さらには一部の風邪薬や喘息治療薬も、便秘の原因となる可能性があります。

原因と考えられる薬剤の使用を中断することが難しい場合は、下剤を推奨しています。多くの常用薬剤が意図せず便秘を引き起こすことがありますから、薬を処方された際は副作用に注意し、不自然な便秘が続く場合は医師に相談することが重要です。

基礎疾患

基礎疾患が便秘を引き起こすこともあります。特に、大腸癌やその他の腫瘍性病変、腸閉塞、炎症性腸疾患(例:クローン病)による腸管の狭窄、また周辺臓器の癌による腸の圧迫などが便秘を引き起こす重篤な原因となります。これらの疾患は腸の構造や機能に直接影響を及ぼし、便通障害を引き起こします。

また、甲状腺機能低下症、糖尿病神経障害、高カルシウム血症、パーキンソン病などの代謝性や神経性の疾患も便秘の原因になり得ます。

ホルモンバランスの変動

ホルモンバランスの変動は便秘症の一般的な原因の一つです。特に女性ホルモンのプロゲステロンは、大腸の蠕動(ぜんどう)運動を抑制する作用があり、このホルモンの分泌が活発になる排卵から月経までの期間に便秘しやすくなります。

また、更年期においてはエストロゲンの低下やホルモンの全体的なバランスの乱れが、自律神経の機能に影響を与え、腸の動きを鈍くさせることがあります。これに加え、精神的ストレスや環境の変化もホルモンバランスを崩し、自律神経を乱れさせることで便秘を誘発します。特にストレスが交感神経を過敏にし、副交感神経の働きが抑制されると、腸の運動が不足し、便秘が発生しやすくなります。

このため、ホルモンバランスの影響を受けやすい女性では、月経周期や更年期に便秘の症状が顕著になることがあります。

便秘症の症状

便秘症の症状は多岐にわたります。主に、数日間排便がない、便が出にくい、便が硬く小さいコロコロ状、残便感、お腹の張りや痛み、食欲不振、吐き気などが挙げられます。

便秘が慢性化すると、腹部にガスが溜まり、おならが臭いや多いといった症状も現れます。さらに、便秘は肌荒れや肩こりといった全身症状にも影響を及ぼすことがあります。

便秘症が長期間続くと、より深刻な健康問題を引き起こすリスクが高まります。具体的には、痔や裂肛などの肛門疾患、硬く乾燥した便が原因での腸閉塞(糞便性イレウス)、腸炎(閉塞性腸炎)、さらには腸管穿孔による腹膜炎など、命に関わる病状を引き起こすことがあります。これらの症状は、腸内の圧力が異常に高まることで起こるもので、時には緊急手術が必要となることもあります。

便秘症の検査方法

便秘症の検査方法

便秘症の診断には、以下の主要な検査方法があります。

・大腸内視鏡検査:大腸の直接的な観察を行い、腸を狭める腫瘍や炎症などを確認します。この検査は、大腸がんやポリープの早期発見にも非常に有効です。検査時には鎮静剤を使用して患者の不快感を軽減します。

・腹部レントゲン:便の貯留場所や量、腸内ガスの溜まり具合、腸閉塞の兆候などを視覚的に評価します。便秘のタイプや原因の推定に役立ちます。

・血液検査:腸の運動を抑制する可能性のある疾患(例:甲状腺機能低下症)、貧血、炎症の有無を調べ、全体的な栄養状態を評価します。

・便潜血検査:肉眼では見えない微量の血便を検出し、大腸がんなどの可能性を調べます。

便秘症に有効な施術・治療方法

生活習慣の改善

便秘症の治療には、生活習慣の改善が基本となります。日常生活の中で実践できるいくつかの方法があります。

・生活リズムの改善:規則正しい生活を心がけることで、自律神経が整い、規則正しい排便が促されます。朝食後のトイレタイムを習慣化することも効果的です。

・適度な運動:日常的に適度な運動を行うことで、腸の動きが活性化します。運動が困難な場合は、腹部マッサージを試みると良いでしょう。

・便意を我慢しない:便意を感じたらすぐにトイレに行くことが重要です。排便を我慢することは便秘を悪化させる原因となります。

・水分摂取:十分な水分を摂取することで、便が柔らかくなり排便がしやすくなります。特に朝起きた後の水分補給は効果的です。

・食生活の改善:食物繊維を豊富に含む食品(野菜、全粒穀物、豆類など)を積極的に摂取し、乳酸菌を含む食品も便秘改善に役立ちます。水溶性食物繊維は便を柔らかくし、不溶性食物繊維は腸を刺激して運動を促しますが、摂取バランスに注意が必要です。

薬物療法

便秘症の治療には、生活習慣の改善と適切な下剤の使用が有効です。以下に主な薬剤の種類とその特徴を紹介します。

・ 刺激性下剤:センノシドやビサコジルなどがあり、これらは腸のぜん動運動を直接刺激して排便を促進します。これらの薬は比較的早く作用しますが、長期使用による腸の運動機能の低下や依存を引き起こすリスクがあるため、短期間の使用が推奨されます。

・浸透圧性下剤:ラクツロースやポリエチレングリコール(PEG)などがあります。これらは水分を腸内に保持し、便を柔らかくして排便を容易にします。副作用が少なく、長期的に使用することができます。

・腸管へ水分分泌を促進する薬剤:ルビプロストンやリナクロチドが該当し、これらは腸内への水分分泌を促進し、自然な便通を助けます。これらの薬剤は特に慢性便秘症の人に推奨され、副作用が少ないことから安心して使用できます。

便秘症のよくあるご質問

Q女性の方が便秘になりやすい理由はなんですか?

A
女性が便秘になりやすい理由はいくつかありますが、主に生理学的、心理的要因とホルモンの影響が大きいです。

・ホルモンの影響:女性は月経周期によりホルモンバランスが変動し、特に黄体ホルモン(プロゲステロン)が排卵後から月経前に増加します。プロゲステロンは腸の動きを抑え、水分の吸収を促進するため、便が硬くなり便秘を引き起こしやすくなります。

・腹圧の弱さ:一般的に女性は腹筋が男性に比べて弱い傾向にあり、排便時に必要な腹圧を十分にかけることが難しいため、便秘になりやすくなります。

・心理的要因:女性は男性に比べて羞恥心から公共のトイレなどで便意を我慢することが多いです。実際、女性の方が男性よりも排便回数が少ないという調査があります。

・妊娠と出産:妊娠中はホルモンバランスの変化により便秘が起こりやすいと言われています。また、出産後の「腸運動の低下や骨盤周囲の筋肉の緩み」が便秘の一因となるかもしれません。

Q便秘が慢性化するとどのようなリスクがある?

A
便秘が慢性化すると大腸の健康に悪影響を及ぼすことがあり、痔や大腸の潰瘍、さらには大腸穿孔など深刻な状態に至る場合があります。これらの症状は非常に痛みが強く、場合によっては命に関わる腹膜炎を引き起こす危険も伴います。

加えて、便秘は日常生活における不快感やストレスの原因となり、生活の質(QOL)を大幅に低下させます。腹痛や腹部膨満感が持続すると、食欲不振につながり、栄養状態が悪化することもあります。これにより全体的な健康が低下し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることが知られています。
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