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ケロイド

ケロイドの治療について

ケロイドとは

ケロイドとは、皮膚の傷跡が正常な治癒過程を超えて異常に肥大化する皮膚疾患です。これは、怪我や手術などで生じた傷が治る過程で、なぜか炎症が持続し、線維組織が過剰に増殖するために起こります。特に、真皮と呼ばれる皮膚の深い部分で炎症が続くことが原因で、痛みや痒みを伴いながら、傷跡が盛り上がってきます。

肥厚性瘢痕とケロイドは似ているようで異なり、前者は傷跡が少し盛り上がる状態ですが、ケロイドはそれがさらに拡大し、傷よりも広範囲に広がる特徴があります。見た目の問題だけでなく、痒みや痛みを伴うため、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼすことも。腫瘍ではなく、悪性腫瘍のように生命を脅かすものではありませんが、精神的にも大きな負担となることから、適切な治療とケアが必要です。

ケロイド

ケロイドの2つの原因

原因①:傷の修復過程

ケロイドの原因は、傷の治癒過程にあると言われています。特定の傷や炎症がきっかけで、皮膚の線維が過剰に増殖することにより発生します。ニキビ、やけど、手術の跡、ピアスの穴など、ささいな切り傷や炎症もケロイドを引き起こす可能性があります。

コラーゲンやそれを作る細胞、血管が集まった腫瘍のような状態を示し、硬く赤みを帯びる特徴があります。最も悩ましい点は、痒みや痛みを伴うことと、傷よりも広がり続ける性質があることです。実際には、見た目にも影響があり、患者さんにとってボディーイメージの変化になります。

治療を放置すると症状は進行し、見た目や感覚においても悪化するため、早期の対応が重要です。

原因②:体質

体質(ケロイド体質)によってケロイドの症状が出やすい方もいます。そして、ケロイド体質が疑われる場合、家族の中にケロイドを経験した人がおり、その体質を受け継いでいる可能性が高いです。

また、有色人種の方々にケロイドが現れやすいという研究結果もあります。これは、人によって傷が治る速度や方法が違い、小さな傷からでもケロイドが生じることがあるためです。さらに、女性の場合、妊娠中にケロイドが悪化することがあります。これは、妊娠によって血流が変わったり、性ホルモンが増えたりすることが、ケロイドを大きくする原因になるからです。

高血圧の人においても、血管の抵抗が増えることでケロイドが悪化することが示されています。したがって、ケロイドは一つの原因だけでなく、体質や健康状態によって左右される複雑な問題だと言えます。

ケロイドの症状

ケロイドの症状

ケロイドの症状は、かゆみや痛み、引きつれ感、横から圧力を加えた際の痛みなど、様々です。

ケロイドの特徴として、表面がピンク色で扁平あるいは半球状に盛り上がる点が挙げられます。この盛り上がりは、時間が経つにつれて徐々に大きくなり、元の傷よりも広がることがあります。つまむと軽い痛みを感じることがあり、時には痒みを伴うこともあります。

ケロイドの好発部位

胸や肩、耳たぶ(ピアスの後)、下腹部(帝王切開後)などが挙げられます。これらの部位は皮膚の緊張が強いため、ケロイドが形成されやすいと考えられています。

一方、顔や頭、手足、下腿などではケロイドが出来にくいとされています。皮膚の緊張が関係しているため、ケロイドがある場合、その部位に強い力が加わる動作は避けるべきです。例として、胸部にケロイドがある状態で腕立て伏せをすると、症状が悪化する恐れがあります。また、腹部手術後に腹筋をすることも同様です。

ケロイドの発生には、皮膚への緊張や動きが影響を及ぼします。そのため、ケロイドがある人は、これらの部位を過度に動かさないよう注意が必要です。

ケロイドの4つの治療法

治療法①:外科的療法・放射線療法

ケロイド治療には外科手術や放射線療法で取り除く方法があります。外科的な方法では、ケロイド部分を切除し、患部を縫合していきます。しかし、手術だけだと縫合創からケロイドが再発するリスクがあり、再発を防ぐためにも放射線療法と呼ばれる後療法が行われます。

手術後に行われる放射線療法の主な目的は、ケロイドを作る細胞の活動を抑えることです。そのため、放射線量を細かく調整しながら、個々に最適な治療が行われます。この処置は、皮膚の表面付近に限定して行われ、痛みもほとんどありません。また、形成外科的手法を用いることで、傷跡の目立たない方法で縫合も可能です。

治療法②:貼付療法

貼付療法は、ケロイドや肥厚性瘢痕の予防及び再発抑制に有効であるとされています。貼付療法には、伸縮性テープを用いる方法、シリコンシートによる圧迫、そして非伸縮性テープを使用するテーピングがあります。

伸縮性テープは、皮膚を引き寄せる力を利用して周囲の皮膚の緊張を和らげることで、ケロイドの発生や再発を防ぐ効果が期待されます。通常、術後約3ヶ月間この治療を継続します。シリコンシートによる圧迫治療は、伸縮性テープと同じくケロイドの盛り上がりを抑えるのに役立ちます。

また、シリコンジェルシートやポリエチレンジェルシートのような素材を使用した貼付療法もあります。これらのシートは、保湿や創の安静・固定に寄与し、痛みを和らげるクッション性があるため、特に疼痛が強い部位に適しています。ただし、汗をかくと容易に剥がれることが難点です。

貼付療法は、ケロイドや肥厚性瘢痕が発生しやすい部位を安静に保つことが重要であるとされています。シリコンジェルシートやクッションをテープや包帯で固定することにより、圧迫・固定の効果を高めることができます。

治療法③:内服療法

内服療法には、トラニラスト(リザベン®)という薬がよく使用されます。この薬は、肥厚性瘢痕やケロイドの原因となる皮膚繊維の過剰な増殖を抑えることにより、症状の改善や、手術後の再発を防ぐ効果が期待できます。また、抗アレルギー作用を持ち、瘢痕部分の痛みやかゆみを軽減することも報告されています。

さらに、漢方薬である柴苓湯(さいれいとう)も、ケロイド治療に利用されることがあります。体内の水分循環を良くし、炎症による赤みや痛みを鎮める効果がありますが、保険適応外であるため自費治療になります。

これらの内服薬は、効果を発揮するまでに時間がかかることや、単独での使用では効果が限定的であるため、他の治療法と組み合わせて使用されることが多いです。

治療法④:ステロイド療法

ステロイド治療は、副腎皮質ホルモンであるステロイドをケロイド部分に直接注射することにより、症状の改善を目指すものです。ステロイドには抗炎症作用があり、皮膚細胞の過剰な増殖を抑制することで、痒みや赤みを減らす効果が期待できます。

しかし、治療には痛みが伴い、月に一度の継続が必要となります。また、皮膚の陥凹変形などの副作用のリスクもありますので、注意が必要です。局注注射以外にも、ステロイド含有の軟膏やテープを使用する方法もあり、これらは注射に比べて痛みが少ないというメリットがありますが、効果の度合いは個人差があります。

ケロイドのよくあるご質問

Qケロイドと肥厚性瘢痕の違いについて教えてください。

A
肥厚性瘢痕は傷の部分が盛り上がったり、赤くなったりしますが、原因となった傷の範囲にとどまります。また、痛みやかゆみがあるものの、時間が経つにつれて薄くなります。

一方、ケロイドは傷の範囲を超えて拡大し、赤みが強くなる特徴があります。痛みやかゆみも強く、患部の範囲を拡大し続けるため、治療が難しいとされています。

Q日常生活でできるケロイド予防はありますか?

A
ケロイド予防には、日常生活での注意が重要です。以下のポイントに留意することで、ケロイドのリスクを減らすことができます。

物理的圧迫:
皮膚科専門医の指示のもとで物理的圧迫を行うことが効果的です。特にケロイドの発生が心配な傷や術後のケアには、専門的な圧迫療法が推奨されます。

傷を作らない:
ケロイドのリスクを減らすために、やけどやピアスなどは控えるべきです。これらの行為は皮膚にダメージを与え、ケロイドの発生リスクを高めます。

日焼けを避ける:
紫外線は肌トラブルの原因となり、ケロイドのリスクを高めます。外出時には日焼け止めを使用し、直射日光を避けるようにしましょう。

傷口のケア:
傷口にはテープで固定し、張力をかけないようにすることが重要です。これにより、傷口の治癒を助け、ケロイドの発生を防ぐことができます。

これらの対策を日常生活に取り入れることで、ケロイドのリスクを効果的に低減することができます。

Qケロイド体質の人の特徴を教えてください。

A
日本人のおよそ1割の方がケロイド体質と言われています。そして、発症頻度は女性が男性の4.2倍であり、原因として多いのがBCGワクチンの接種によるものとわかっています。

また、ケロイド体質における家族歴は「38.9%」、アレルギー疾患の有病者歴は「48.9%」と強い関連性も認められています。
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