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炎症後色素沈着

炎症後色素沈着の治療について

炎症後色素沈着とは

炎症後色素沈着とは、皮膚が外傷、熱傷、日焼け、ニキビなどの炎症を経験した後に、色素細胞が過剰に活性化し、メラニン色素を増加させることで発生する肌の変色です。

この状態は灰褐色、茶褐色、紫褐色のシミとして現れ、肌の新陳代謝により通常は半年から1年で自然に薄くなることが一般的です。しかし、炎症を引き起こす原因や肌の状態によっては、修復までに数年かかることもあります。

炎症後色素沈着の原因には、摩擦や間違った脱毛、過度の洗顔やマッサージ、衣類によるこすれなどがあり、これらは日常的な習慣でありながら、肌へのダメージとなりうるため注意が必要です。

色素沈着

炎症後色素沈着の原因

炎症後色素沈着の原因として、ニキビ、湿疹、虫刺され、傷、火傷などの直接的な炎症や、肌を強くこする行為、刺激の強い化粧品の使用、毛抜きによるダメージ、ピーリングなどによる見た目にはわからない程度の炎症が長期にわたって続くことが挙げられます。

これらの炎症が引き金となり、メラノサイトが過剰にメラニンを生成し、正常な代謝プロセスによって排出されずに肌に残ったメラニンが色素沈着、すなわちシミとして現れます。また、誤ったスキンケアや日焼けが炎症を悪化させ、色素沈着を引き起こすこともあります。黄色人種では黒色メラニンが多く、炎症後の色素沈着が特に目立ちやすいとされています。

炎症後色素沈着はどのように発症するか

炎症後色素沈着とは、皮膚に受けたダメージ(外傷、やけど、強い日焼けなど)による強い炎症が治まった後、その部位に現れる灰褐色、茶褐色、紫褐色のシミのような色素沈着です。この状態は、炎症を引き起こしたエリアのメラニン色素が増加することにより発生します。炎症が生じると、化学物質が産生され、これらによってメラニンを作る細胞(メラノサイト)が刺激され、メラニンの合成が亢進します。結果として色素沈着が生じるのです。この化学物質は、外傷や熱傷、日焼けなどの炎症により変化するメラノサイト周りの細胞、血管、神経から分泌されるもので、それぞれの炎症によって関与する細胞や化学物質が異なります。炎症後色素沈着は見た目に影響を与え、特に皮膚が治癒した後も長期にわたって残ることがあり、美容的な悩みの原因となることもあります。

炎症後色素沈着の予防法

紫外線対策

炎症後色素沈着を予防するための最も基本的かつ効果的な方法は、紫外線対策を徹底することです。紫外線にさらされることで、炎症後の色素沈着が悪化するリスクが高まります。これは、紫外線が直接肌に当たることでメラニン色素の生成が促進され、既存の色素沈着をより目立たせる原因となるからです。特に炎症後の肌は紫外線を吸収しやすく、その結果として色素沈着が深く、長期間残る可能性があります。

このため、日焼け止めクリームの使用、帽子や日傘の活用など、日頃から紫外線から肌を守る対策を講じることが重要です。紫外線対策は、晴れの日はもちろんのこと、曇りの日にも必要であり、外出時には必ずUVカット効果のある日焼け止めを塗り、数時間おきに塗り直すことが望ましいです。また、日焼け止めは肌に合ったものを選び、規定の量をきちんと塗る必要があります。

睡眠対策

炎症後色素沈着の予防と改善には、質の高い睡眠をとることが非常に重要です。適切な睡眠は肌の新陳代謝、つまりターンオーバーを促進し、メラニンの処理を効率化することで、色素沈着を防ぎます。

睡眠不足が続くと、ターンオーバー周期が遅れ、肌がメラニンをうまく処理できず、シミとして定着しやすくなります。また、肌のバリア機能とも密接に関連しており、睡眠不足はバリア機能の低下につながり、肌の乾燥を引き起こす可能性があります。

適切な睡眠は、紫外線によるダメージからの回復にも必要であり、沈着したメラニン色素が表皮の表面まで押し出され、自然と剥がれ落ちる過程を助けます。このプロセスにより、肌は約1ヶ月の周期で生まれ変わりますが、睡眠不足や加齢によりこの周期は遅れがちです。

そのため、日々の生活で質の高い睡眠を確保すること、そして適度な運動を取り入れてストレスを管理し、睡眠の質を向上させることが、炎症後色素沈着の予防に繋がります。

肌管理の徹底

炎症後色素沈着の予防において、保湿は重要な役割を果たします。肌への摩擦を避けることが大切であり、洗顔や体を洗う際は、肌への刺激を抑える泡立てた洗浄剤の使用が推奨されます。デリケートゾーンについても同様で、専用の泡タイプボディソープが良い選択となります。これらの措置は、乾燥を防ぎ、肌のバリア機能を維持するのに役立ちます。

洗顔後のスキンケアでは、化粧水、乳液、クリームを使用して、保湿をしっかりと行うことが重要です。保湿は肌のターンオーバーを促進し、健やかなバリア機能を保持するために不可欠です。さらに、肌の乾燥は色素沈着を促進する炎症を引き起こしやすくするため、保湿による乾燥対策は色素沈着の予防にも繋がります。

保湿には、プラセンタや美白成分を含む製品がおすすめですが、刺激が強い美白クリームは避け、肌に優しい製品を選ぶことが大切です。美白成分と保湿成分を充分に含むスキンケア製品を選ぶことで、色素沈着の予防と改善に効果的に対応できます。製品選びで迷った際は、専門家に相談すると良いでしょう。

炎症後色素沈着に有効な施術・治療方法

薬物療法

炎症後色素沈着の治療における薬物療法では、色素細胞の活性化を抑えることと肌の色素代謝を促進することが主な目的です。以下に、その効果を期待できる5種類の主要な薬剤とその具体的な作用を紹介します。

・トレチノインクリーム(外用薬):肌の再生を促し、古い表皮とともにメラニン色素を押し出し、色素沈着を改善します。特に肝斑や炎症後色素沈着に有効で、加速された表皮の細胞分裂により、皮膚の再生を促進します。

・ハイドロキノンクリーム(外用薬):メラニンの生成過程に働きかけるチロシナーゼという酵素の活性を抑制し、シミを薄くする効果があります。また、美白効果を示し、色素細胞の活動を抑えます。

・トラネキサム酸(内服用):シミの原因となるメラニン色素の生成を抑え、炎症を抑える作用があり、美白効果が期待できます。その上、そばかすや肝斑、老人性色素斑、傷などの炎症後色素沈着に効果的です。

・ビタミンC錠(内服用):メラニン色素の産生を抑える効果があり、チロシナーゼの活性を阻害します。酸化型メラニンに対する還元作用により、美白効果があります。

・ビタミンE錠(内服用):紫外線照射時に増加する脂質の過酸化を抑制し、メラニン合成シグナルを抑制します。ビタミンCと同時に摂取することで、美白作用を高めることが期待できます。

レーザー治療

炎症後色素沈着の治療において、レーザー治療は効果的なオプションの一つです。主にフォトブライト(ライムライト)、レーザートーニング、ケミカルピーリングの3種類があり、それぞれに特徴と効果があります。

フォトブライト(ライムライト)
・薄い色から濃い色までの幅広いシミに効果を発揮し、広範囲に光を照射できるため、顔全体に複数あるシミにも対応可能です。
・シミやくすみ、赤みを取り除き、肌を内側から活性化させることで、弾力アップ、小じわの改善、毛穴の引き締めに効果があります。治療中の痛みや治療後の腫れがほとんどないのも特徴です。

レーザートーニング
・弱い出力のレーザーをシミの部分に何度も照射し、肌内部のメラニンを少しずつ排出する方法です。痛みが少なく、ダウンタイムがないため、日常生活に影響を及ぼさずに治療できます。
・シミだけでなく、くすみやシワ、毛穴の開き、肌の質感の乱れなどにも総合的な美容効果が期待できます。

ケミカルピーリング
・サリチル酸やグリコール酸などの酸を使用して肌表面の角質を溶かし、ターンオーバーを促進する方法です。広範囲に対応できるため、大きなシミや顔全体のくすみに効果的です。
・現在あるニキビにも有効であり、ニキビとニキビ跡が混在している場合には、予防の意味でもケミカルピーリングが推奨されます。

炎症後色素沈着のよくあるご質問

Q炎症後色素沈着は、シミ・ニキビ跡と何が違うの?

A
炎症後色素沈着と老人性しみ(一般に「シミ」と呼ばれる)は、色合いは似ているものの、発生原因と治療方法に大きな違いがあります。

炎症後色素沈着
炎症によって色素細胞が一時的に活性化された結果生じる色の変化です。原因となる炎症が治まれば、肌の色素代謝が正常であれば自然に軽快することが多いです。

老人性しみ
長年の紫外線露出など外部からの刺激によってメラニン色素が蓄積し、表皮のターンオーバーに異常が生じることで発生します。この状態では、異常な角層細胞が塊となって脱落せずに皮膚に留まり、一種の良性腫瘍とも言える状態になります。これらの角層細胞の塊を除去することが、治療の主な方法となります。

シミという言葉は、広義には色素病変の総称として用いられることがありますが、老人性しみはメラニンが蓄積した結果生じる特定の状態を指します。これに対し炎症後色素沈着は、炎症が原因で生じる色素の変化であり、治療法も異なります。老人性しみにはビタミンCやトラネキサム酸、美白剤が効きにくい場合が多いのに対し、炎症後色素沈着はこれらの薬剤や適切なスキンケアによって改善が期待できます。

Q炎症後色素沈着は保険適用の対象でしょうか?

A
炎症後色素沈着の治療法において、保険適用されるかどうかは、選択される治療法によって異なります。一部の薬物療法では保険適用の可能性がありますが、多くの美容皮膚科や美容外科で行われる施術は自由診療となることが一般的です。

・トラネキサム酸(内服用)とビタミン剤(内服用):肝斑や炎症後色素沈着の治療に対して保険適応が認められています。トラネキサム酸は特に肝斑治療の維持療法に頻用されており、ビタミン剤は炎症後の色素沈着に効果を期待できます。

・トレチノインやハイドロキノン:日本ではニキビやシミ治療の効能効果が医薬品として認められていません。これらの薬剤は海外ではシミやニキビ治療に使用されることがありますが、国内での治療に使用する場合は自由診療となり、費用は全て自己負担となります。

・レーザー治療:フォトブライト(ライムマイム)、レーザートーニング、ケミカルピーリング、これらのレーザー治療は保険適応外で、全て自己負担となります。
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